『王朝雑録』

「? アウレリアス、何それ?」
「ん? ああ、ジョルジュ様。……いえ、大したものでは」
「ふうん。で、何?」
「え? いえ、ですから大したものでは……」
「大したものじゃないんなら、僕がみても良いじゃない」
「とんでもありません! ジョルジュ様のようなお方が見てよいものではありませんよ」
「アウレリアスは見てるのに?」
「私は……それが仕事ですから……」
「見せてくれないの?」
「ですから……本当に大したものではないのですよ?」
「うん」
「……では、どうぞ」
「うん。……何だ、管理人の経歴表じゃないか。つまんないの」
「ですから、先ほどからそう申し上げているではないですか……」
「『昔、自分の身体には血の代りにワインが流れていると言った芸能人がいましたが、さしずめ僕の場合は血の代りに珈琲が流れているとでも言うべきでしょう。』……うわあ、ホントにつまんないや」
「私も、仕事でなければ読みたくもないのですが……」
「だよね。……ところでさ、この『珈琲』って、何のこと?」
「さあ、私もよく判りません。……ただ、葡萄酒と並べて記述してあるところから察するに、おそらく何かの飲み物を指しているのではないでしょうか」
「そっか……」
「あら? 何でしょう、この一節? 『好きな食べ物は“赤い狐”』ですって。狐が好きらしいですわね」
「どれどれ? 本当だ、そう書いてある。『……しかしどれでも良いというわけではない。県内では有名な老舗の弁当屋『ヒ○イ』、ここの狐饂飩がベストであると思う』。……何? この『饂飩』って」
「新種の狐かしら?」
「いや、違うようだ。言葉の順番が違ってる」
「これも食べ物なの?」
「そうみたいですが……どういうものかは皆目見当がつきませんね」
「弁当屋で出されてる食べ物ってあるよね? ということは、やっぱり持ち運べるようなものなのかな?」
「持ち運べて、狐と一緒に食べるようなもの? ……想像もつきませんわね」
「ところでさ、この“赤い”って、何のことかな?」
「……きっと、何かのスパイスなのではないでしょうか?」
「何で判るの?」
「ここです。この一節。『……それにしても、店にとってはそうとう迷惑な客なんだろうな俺って。何せ1週間でテーブルの一味全部使い切っちまうからね。南島の○ライはホント大変だったろうなきっと』……これからすると、食事の際に使う香辛料のことではないでしょうか」
「そうか。香辛料で赤くなるっていったら……」
「唐辛子くらいしかありませんね」
「真っ赤になるくらい唐辛子を入れた食べ物って……どんな味なのかしら?」
「……美味しいのかな?」
「少なくとも管理人はそう思っているようですよ」
「……うええ」


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