皇天順ならず(高汝蓮)第45話

「うん?」
「人馬の声!?」
「兵だ!」
角を吹く。衆は則ち頓【とみ】に(急に)合わさり、穹廬を環遶した。まだ馬に乗らない。
数騎が至り、呼ぶ。
「タイシ=リンヤ!!」
「あれは我らの欄子馬(偵察)と……エウシェです!」
エウシェは下馬し、そのまま崩れるように膝をついた。
少し顔を上げてつぶやくように言う。
「リンヤ……」
「どうした?」
オリラが近づき問うた。
「ジュレ郎君が……乱兵の弑するところとなりました」
「え!?」
オリラはタイシを顧みる。
「……」
タイシは腕を組み、眉を斂【おさ】めた(ひそめた)。
代わりにフティンが尋ねる。
「自称、枢密使のディレは如何した?」
「ウチ都統と与に衆の殺すところとなり……、テムゲ知北院枢密使事は天祚皇帝の下に走りました」
皆、黙る。
「また、ひとり、横帳(皇族)が……。哀を挙げねばならないな」
タイシはオリラを見て頷く。
オリラが麾【さしまね】き(手で指図)、兵が散る。
エウシェの軍も馬を引き、オリラに従う。
「フティン都統?」
オリラが兵らを視ながら声をかけた。
「ん?」
「何か笑っているような?」
「そう見えるか? ちょっと不謹慎かな」
「……」
「卿は、わかるであろう?」
「……」
オリラが黙っているので、タイシが訝しげに訊【たず】ねる。
「何だ?」
フティンは答えず、ほんとうに笑った。
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