皇天順ならず(高汝蓮)第44話

跪いた者ら。
後手に縛られている。
縄は柵に繋がっていた。
そこへタイシが至る。オリラ・テゴ、兵らが次ぐ。ジャラーブはタイシの、すぐ後に立つ。
エンシャンが呼ぶ。
「マジェ!」
一人が貌を上げ、起きる。
「タイシ=リンヤ!?」
「坐れ。どうだ? 驚いたか? リンヤは汝に話を聞きたいそうだ」
エンシャンは笑い、手に持っていた書を開く。
「リンヤ、我が先に査【しら】べています。それによりますと……」
「それより前に、一つだけ」
タイシは手でエンシャンを遮る。エンシャンは肩を落とした。
「マジェ。ウキマイを見たか?」
「はい。しかし、我らは遠くからのみです」
「何か聞いているか?」
「長八尺、落落(こだわらない)にして大度有り、など」
「位を嗣ぐ時の事は、どうだ?」
「……たしか、宗翰(ネモホ)らが宗親・百官を率いて請い、許さないとみると、宗幹(オベン。アクタの庶長子)が諸弟を率いて赭袍を被せ、璽を懐中に置いた、とか」
タイシはエンシャンの方を向き頷く。
オリラが手を挙げる。
エンシャンが困った顔をした。
「すまん、ちょっとだけ。……今のは誰の言かな?」
マジェは顔を伏せた。
「……」
「ユドゥクか?」
「いや、違う」
「なら誰だ?」
「……」
テゴが問う。
「ジュルチェン人か? ジュルチェン人なのだな!?」
「……」
「汝はジュルチェン人と通じているのであろう?」
「違う!」
「それでリンヤか天祚を探るために、故意に擒となったのであろう?」
「違う! そんなことはない!!」
「……聞くところによると、汝がアクタに、ユドゥクらが党を結び謀反したと告げた」
「あれは計謀だ。我らを分けるための! おかげで我はユドゥクに疎んじられ、さらに同じキタン人にすら蔑【さげす】まれた」
「だから逃げてきたのか? 怪しいな」
「……」
エンシャンはタイシを顧みる。すでに書を閉じていた。
「リンヤ? ……どうしますか? 天祚の営に送りますか?」
マジェが叫ぶ。
「そんな? やめてくれ! 殺される! どうして、ここに来たか、わかるであろう!?」
「いや、縄を解き、食を給してやれ。しかし、馬に乗せるな」
タイシはエンシャンに、別の柵で囲んでいる地を指し示す。
「は? いいのですか?」
エンシャンは書を丸め、マジェらを指す。
「さしより鳥獣の監養をしてもらうか」
マジェらが右膝を地に著(着)け、左膝を危坐した。
タイシが言う。
「ナボ(天祚皇帝の営)への嚮導(道案内)をしたくないだけだ」
「そうだ! もし、何かを企てようものなら……」
エンシャンは頭を回らす。マジェらも、その先を視る。
ジャラーブが鉅大な体を動かし、槊を地から浮かせた。
マジェらは身を震わせながら後に引く。
タイシが頷く。
ジャラーブが槊を突き出す。
マジェは叫び、身を縮める。
縄が解けた。
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