「僭偽列伝 袁術」あとがき。或いは冗話。

 嘘です、こんな物は。
 袁術は、もっと悪いやつなんですよ。
 一応、袁術の関係者は、名前のわかっている者を、だいたい出したつもりです。ほとんど“三国志”において一度きりしか出て来ません。出ていない者に陳王劉寵を暗殺した張カイ[門・豈]陽なる者(曹嵩を暗殺した張カイと同一人物か?)、故吏の劉勲、最後に裏切った部曲の雷薄と陳蘭。部下でないけれど、馮氏の父の馮方、淮南に避難してきた鄭渾や韓曁、帝位に即くかどうかで袁術が相談しようとした張範、その代わりに遣わされた弟の張承という人などいます。字を出せないので喬(橋)ズイ[くさかんむり・琢のつくり・生]は姓だけ。
 人物の紹介などは省きます。なんせ“三国志”ですから。
 袁紹・曹操・孫堅・孫策を名前しか出さなかったのは、有名人だからです。また、すでに日本語訳“三国志”があるので、袁紹の手紙・袁術の手紙・孫策の手紙・その他の袁術の言動などを省きました(実を言うと漢文は苦手?)。
 呉氏が伝国璽を袁術に贈ったというのは、ちょっとやりすぎかな。
 漢の皇帝は、伝国璽だけでなく白玉の六璽をそなえていました。皇帝行璽・皇帝之璽・皇帝信璽・天子行璽・天子之璽・天子信璽です。
 符命は王莽の時と同じです(『漢書』99上)。
 即位儀・天子の服・天子の車などは各資料の混合物となってしまいました。そのため事実と違うでしょう(八歳の女童が舞う、なんてどっから取ったっけ。『漢官儀』だったかなあ)。
 三公九卿二十七大夫八十一元士とかは『礼記』王制・昏義から。実を言うと、どういうものかわかりません。
 “仲”について何か論文があったようなのけれど、失念してしまった。国号は“成”であったということをどこかで読んだような。しかし、史料上で見つかりませんでした。“仲”でないのなら“楚”か“淮南”であったでしょう。
 伝国璽は秦の始皇帝から清の宣統帝まで伝来したのでしょうけれど、それは唯一の物でありません。途中で紛失したり、再刻したりしたので、別の物となっていったことでしょう。刻文も、篆書から烏蟲書なるものになってしまいました(初めから烏蟲篆なるものはあったらしい)。
 袁術は、よく築城したのか、袁術固・公路塁・袁術城などあったらしいのです。また公路澗という地名も(『三国志集解』6)。
 師宜官は書家として有名になったらしい。袁術が碑を立てています(『三国志』1・『晋書』36)。
 じっさいに徐キュウ[王・謬のつくり](字を孟玉)は伝国璽を献帝に奉っています(『後漢書』48)。袁術の姉か妹が、楊彪に嫁いでいでおり、彪の子で曹操に殺された楊修は袁術の甥にあたります。
 張嘉と王休は関羽に璽を献じました(『三国志』32)。袁術と関係ありません。
 呉の国は金で璽をつくりました。碧玉の伝国璽を使ったかどうかわかりません(『三国志』46)。
 有名な最後“蜜漿を得ようと欲した” “頓伏し血斗余をはき死んだ”を入れるかどうか迷いましたけど、入れませんでした。
 息子の袁燿は孫権に仕え、娘は孫権の子を教育しました。袁燿の娘は孫権の子、孫奮に配されています。
 余談です。
 袁術の術は“じゅつ(上古音はディウオト?)”と発音するのではなく“すい(ティウオル?)”と発音するらしい。『三国志集解』6袁術に「胡三省曰く」として「術音遂」とあります。つまり袁術の上古音は“ギュアン=ティウオル?”?? ただし、この片仮名表記、正しいかどうかわからない(実を言うと、これで小説を書きたかった)。

 以下、使った資料についてです。
●史料
『書経』(《尚書今古文注疏》孫星衍・1815序・中華書局・1986)
『礼記』(《十三経》北京燕山出版社・1991)
『漢旧儀』衛宏・西暦57年以前?(四部備要・台湾中華書局・1966〜1977)
『漢書』班固など・82(中華書局・1962)
『東観漢紀』班固など・177以前(四部備要)
『漢官儀』応劭・197(四部備要)
『三国志』陳寿・297以前(中華書局・1959)
『続漢書』司馬彪・306以前(『後漢書』の「志」)
『後漢紀』袁宏・376以前(文淵閣四庫全書・台湾商務印書館・1983〜1986)
『後漢書』范曄・432(中華書局・1965)
『晋書』房喬など・646(中華書局・1974)
『宋書』沈約・488(中華書局・1974)

 ほかに百衲本二十四史(商務印書館・1930〜1937)・二十五史(開明書店・1935)、『三国志集解』(盧弼・1936・中華書局・1982)、和刻本正史(長澤規矩也・汲古書店・1972〜1973)など。もとの四庫全書は1772〜1781。四部備要は1927〜1931(上海中華書局)と同じか?

○日本語訳
『書経』加藤常賢訳・明治書院・1996(12版)
『礼記』竹内照夫訳・明治書院・1971/1977/1979
『漢書・後漢書・三国志列伝選』本田済抄訳・平凡社・1968
『漢書郊祀志』狩野直禎・西脇常記訳・平凡社・1987
『三国志』筑摩書房・1977・1982・1989
『三国志英傑伝』徳間書店・1994
『後漢紀』中林史朗抄訳・明徳出版社・1999
『後漢書』藤田至善抄訳・明徳出版社・1988
『晋書』越智重明抄訳・明徳出版社・1989

○伝国璽について
『輟耕録』陶宗儀・1366(四部叢刊三編)
『昌谷集』曹彦約・1237ごろより前(文淵閣四庫全書)
『烏蟲篆大鑑』丸山楽雲・東京堂出版・1989

○発音について
『広漢和辞典』諸橋徹次・大修館書店・1982
『漢和大事典』藤堂明保・学習研究社・1980

  “三国志演義”関係・索引・人物事典・一般書・論文・小説・まんが・事典・辞書などは、省略します。


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