「少年と老人」あとがき。あるいは言い逃れ。

 琥珀色の馬などは『元朝秘史』に出てきました。
 くろい帽子・紫の袍などは『契丹国史』から。豹皮の弓袋は……どこだろう? 資料がわからなくなりました。これらは契丹族の身分ある者の服装、ということにしました。
 黒い仔山羊の皮は貧乏人の用いる物らしいです(『元朝秘史』)。
 老人はタタル(タタール。韃靼)語で声をかけたのでした。
 ここでの氏・部族は、もちろん現代の意味と違います。初め、オボク(氏族)とかイルゲン(相手側の民)などを使おうと思いましたけれど、自信なく、やめました。
 キタンは契丹です。キタイとしません(『世界の歴史』7「宋と中央ユーラシア」平凡社・1997)。
 シュムル=オリラは蕭斡里剌。愛宕松男氏は、蕭はもともと審密で、金時代に石抹。発音はシャルムートでモンゴル語のシャル(去勢された雄牛)からということです(『東洋史学論集』三一書房・1990・第3巻「キタイ・モンゴル史」)。しかし、牛ならモンゴル語でサーマル(乳牛)という言葉もあります。似ているような……。ここでは清時代に変更された漢字表記を使ってみました(ワープロの漢字にありません)。
 同じように耶律は金時代に移剌となります。愛宕松男氏はヤラート(『世界伝記大辞典』ぽるぷ・1978ではイラート)とされていました。ウレー(モンゴル語、3・4・5歳の馬。または去勢馬)という言葉もあります(『モンゴル秘史』(『元朝秘史』)村上正二氏訳・平凡社・1970)。ここでは簡単にエリ(以前イラ)としました。
 チュイ(チュー)河はイシク=クル湖から流れています。クス=オルダは現在のトクマク付近と思われているらしいです。クルグズスタンの首都ビシケクも近い(地図の上で)。
 サルタウルは地元イラン系の人といったところでしょう。
 ここの天神さんはアッラーです。
 シャンキンは上京(内蒙古自治区巴林左旗林東鎮南)のこと。
 ジュルチェンは女真(女直)で、もともと朱理真だったようです(『三朝北盟会編』巻3)。完顔をワンギヤと発音するのは『満洲実録』(今西春秋訳・刀水書店・1992)からです。阿骨打はアクタとしました。満洲語・モンゴル語で去勢した馬(せん馬)をアクタといいます(軍馬に使ったらしい)。
 『元朝秘史』ではオンギン(金の丞相を指して)とかアクタイ(金の皇帝を示すのに)とか出てきます。アルタンはモンゴル語で金です。
 皇帝は、おなじみのカガン・カーン・カン・カアン・カハン・カハーン・ハカンなどと表記されるものです。これは時・所・人によって変わるので今回は使いませんでした。
 また、カガンのカなど――口蓋摩擦音――は、すべてカ行にしました(たとえばホレズムをコレズムといった具合に)。
 164万2800というのは『遼史』巻36から。ルク河は中国・ロシア国境付近。パイコウ(白溝)は北京の南にあったらしいです。
 “ジュルチェンが万に満つれば”というのは『金史』巻2にあります。
 契丹人の伝説は『遼史』巻37や『契丹国史』本末にあります。
 人名・地名を、むりやりカタカナにしてしまいました。エリやネウラコの漢字は出ませんので。ムエは木葉、タイヅは太祖、エリ=アボキは耶律阿保機、リウ=イは劉億、チュリジは啜里只です。タツンは徳宗、タイシ=リンヤは大石林牙、耶律大石のこと。ベイティンは北庭、イリ河はカザフスタンにあって、バルハシ湖とつながっています。タジクは大食で、だいたいウマイヤ朝やアッバース朝につけられていました。ここではカラ=カン朝のことです。ただしカラ=カン朝というものは存在しなかったので、アフラシヤブ氏を使いました。それらはドーソンの『モンゴル帝国史』(佐口透訳・平凡社・1968〜1979)などから採用しました。
 普き皇帝はグル=カン、天が祐ける皇帝はそのまま天祐皇帝です。
 穹廬はテントで、モンゴルのゲル。漢字で天幕・帳幕などと書かれていました。
 耶律大石以下、歴代の事跡は『遼史』の中から適当な文章を選んで使いました。
 イレは夷列、タブエンは塔不煙、プスワンは普速完、チルクは直魯古です。
 ネリは涅里と書きます。これは架空の人物です。しかし、チルクが次子であることと、『モンゴル帝国史』などから居たであろうと思い、ここに登場させました。
 ドルブは朶魯不、ブクジシャリは朴古只沙里。
 コレズム(現代のウズベキスタン語?)は、ホラズム・ハーラズム(ペルシア語?)・クワーリズム(フワーリズム。アラビア語)で、のちにモンゴルによって滅ぼされるホラズム=シャー国です。現在は、ウズベキスタンの一つの州になってます。
 バルクはふつうバルフと表記されます。グール(ペルシア語)はふつうゴール朝とされます。
 セルチュク(トルコ語)はセルジューク朝のこと。ペルシア語ではサルジューグと読めます。
 テムジンは1167年ごろに生まれた事にしています(『聖武親政録』)。


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